袴田 巌さんと成年後見制度 ― 2024年10月16日 21:06
袴田 巌さんと成年後見人選任申立を巡る司法の動き
58年前に静岡県清水市で発生した「一家4人殺害事件」の犯人とされた袴田 巌さんは、最高裁で死刑が確定していました。これを巡って再審請求が二度に渡って起こされています。2024年9月26日静岡地裁は、再審無罪判決を言い渡しました。10月9日検察当局は上訴権を放棄し、袴田 巌さんは長きに渡った冤罪事件から解放されました。
私たちは、横浜で法人後見に取り組んでいますが、袴田 巌さんと成年後見制度が深く関わっていたことを知りました。
一つには、後見人、保佐人は刑事訴訟法第439条で再審請求者になり得ること。
二つには、被後見人は刑事訴訟法第479条1項にいう「心身喪失」の状態として死刑の執行を停止される可能性があること。
袴田 巌さんを冤罪事件から救出するための支援の一環だったようです。だから後見開始請求について、司法当局は認めることをしませんでした。
袴田 巌さんの姉:秀子さんは、成年後見制度の保佐人に就任し、刑事訴訟法439条の補佐人を兼務し、心身喪失状態で出廷免除されていた巌さんに代わって裁判所で代弁を行ってきたのです。
今振り返ると、犯人を立証する証拠が捏造だったとするのが表の劇なら、表の劇に合わせようとするかの如く知られていない裏の司法当局のドタバタ劇がありました。
袴田 巌さんの成年後見人選任を巡る司法当局の動きです。これは茶番劇です。木を見て森を見ずとも言えます。ここに私の知る限りの経過をまとめておきます。
<経過>
-----------------------------
●2004年(平成16年)2月、袴田さんの姉の秀子さんが遺産分割協議のため静岡家裁浜松支部に袴田 巌さんの成年後見人選任の審判を申立。
3月、静岡家裁浜松支部が袴田さんの成年後見人選任の審判申立を東京家裁に移送。
●2008年6月27日、東京家裁(上原裕之裁判長)は袴田さんの姉の秀子さんが袴田巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立を却下。弁護団によると、家裁は医師の鑑定に基づき、袴田 巌さんが長期間の拘置による拘禁反応で精神障害状態に陥っていると認定したが、「日常的に必要な買い物はできる状態にある」として、後見人が必要ではないとした。袴田 巌さんの精神障害を裁判所が認めたのは初めて。
●7月10日、袴田 巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立が却下されたことを受け、弁護団は東京高裁に即時抗告した。
●12月19日、東京高裁(園部秀穂裁判長)は袴田巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立を却下した。1審・東京家裁決定を破棄し、審理を差し戻した。
●2009年(平成21年)3月2日、東京家裁は袴田 巌さんの姉:秀子さんを保佐人とする決定を下した。保佐人は再審請求の権利を持つことから、第2次再審請求の障害となっていた法的問題が解消される見通しとなり、弁護団は「実体審理に入っていけるので喜ばしい」と評価している。弁護団は、袴田 巌さんが常時判断能力を欠くとして成年後見制度における「後見開始」を申し立てていたが、同家裁は判断能力の欠落にまでは至らず、著しく不十分な状態にあるとして「保佐開始」の決定に止めた形だ。2004年(平成16年)の申立開始後、高裁差し戻しを経て、5年目の決定となった。
●2011年(平成23年)1月27日、日弁連が弁護団の人権救済申立に基づき、袴田 巌さんに強い精神疾患がみられ心神喪失状態だとして刑の執行を停止し、適切な治療を受けさせるよう法務省に勧告した。日弁連は再審請求や後見開始の審判に伴う精神鑑定などから、深刻な妄想性障害と判断している。
●2012年4月25日、袴田 巌さんの姉:秀子さんは東京家裁に成年後見制度に基づく後見開始の申立を行った。2009年(平成21年)に袴田 巌さんの保佐人に選任された秀子さんは「認知症の病状が年々悪化している」と説明。弁護団は「後見開始で心神喪失状態と認められれば、死刑執行の停止につながる」としている。
●6月28日、2次再審請求中の袴田 巌さんに対して東京家裁が精神鑑定を実施することがわかった。成年後見制度に基づき、姉の秀子さんが申請している成年後見人就任の可否を判断する。秀子さんは既に袴田 巌さんの保佐人を務めているが、財産管理などでより権限の強い成年後見人になることを求めている。岡島弁護士は「後見人は、本人が心神喪失状態にないと就任できない。認められれば、刑事訴訟法に基づき、死刑執行が停止される可能性がある」と話した。
●2013年5月21日、東京家裁(小西洋家事審判官)は袴田 巌さんの姉:秀子さんによる成年後見の開始申立について却下した。小西審判官は「必要な鑑定ができず、後見開始の審判ができない」とした。弁護団が即時抗告。弁護団によると、同死刑囚は2011年時点で認知症の疑いがあったという。
●2013年7月10日、東京高裁は袴田 巌さんの姉:秀子さんが静岡地裁に第2次再審請求中の袴田 巌さんの後見人就任を求めた申立の即時抗告で「精神鑑定ができていない」との理由を示し申立を棄却した。秀子さんは決定を不服として最高裁へ特別抗告した。
●2013年9月30日、最高裁第1小法廷(横田尤孝裁判長)は袴田 巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人への就任を求めた申立の特別抗告で棄却する決定を出した。袴田 巌さんの弁護団が明らかにした。裁判官5人が全員一致で「単なる法令違反の主張で特別抗告の事由に該当しない」と判断した。
*東京家裁は2009年3月2日付で姉の秀子さん(76)を成年後見制度の保佐人に選任する決定を出した。この制度が死刑囚に適用されるのは初めて。保佐人は、精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり、一定の財産処理などを行う権利があり、再審請求も可能である。2008年4月の第2次再審請求は、袴田死刑囚が心神喪失状態として、秀子さんが申立人になったが、検察側は「秀子さんに請求の資格はない」としてきた。秀子さんが保佐人になったことで、資格を理由に請求が門前払いされる可能性はなくなった。なお、秀子さんは2004年2月に後見人選任を申立たが、東京家裁は2008年6月に却下。即時抗告(裁判上、迅速に確定されることが必要な決定について、期間を定めて認められる不服申し立ての方法)に対し、東京高裁は2008年12月、家裁に審理を差し戻していた。
<刑事訴訟法>
第四百三十九条 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。
一 検察官
二 有罪の言渡を受けた者
三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人
四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹
第四百七十九条 死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。
58年前に静岡県清水市で発生した「一家4人殺害事件」の犯人とされた袴田 巌さんは、最高裁で死刑が確定していました。これを巡って再審請求が二度に渡って起こされています。2024年9月26日静岡地裁は、再審無罪判決を言い渡しました。10月9日検察当局は上訴権を放棄し、袴田 巌さんは長きに渡った冤罪事件から解放されました。
私たちは、横浜で法人後見に取り組んでいますが、袴田 巌さんと成年後見制度が深く関わっていたことを知りました。
一つには、後見人、保佐人は刑事訴訟法第439条で再審請求者になり得ること。
二つには、被後見人は刑事訴訟法第479条1項にいう「心身喪失」の状態として死刑の執行を停止される可能性があること。
袴田 巌さんを冤罪事件から救出するための支援の一環だったようです。だから後見開始請求について、司法当局は認めることをしませんでした。
袴田 巌さんの姉:秀子さんは、成年後見制度の保佐人に就任し、刑事訴訟法439条の補佐人を兼務し、心身喪失状態で出廷免除されていた巌さんに代わって裁判所で代弁を行ってきたのです。
今振り返ると、犯人を立証する証拠が捏造だったとするのが表の劇なら、表の劇に合わせようとするかの如く知られていない裏の司法当局のドタバタ劇がありました。
袴田 巌さんの成年後見人選任を巡る司法当局の動きです。これは茶番劇です。木を見て森を見ずとも言えます。ここに私の知る限りの経過をまとめておきます。
<経過>
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●2004年(平成16年)2月、袴田さんの姉の秀子さんが遺産分割協議のため静岡家裁浜松支部に袴田 巌さんの成年後見人選任の審判を申立。
3月、静岡家裁浜松支部が袴田さんの成年後見人選任の審判申立を東京家裁に移送。
●2008年6月27日、東京家裁(上原裕之裁判長)は袴田さんの姉の秀子さんが袴田巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立を却下。弁護団によると、家裁は医師の鑑定に基づき、袴田 巌さんが長期間の拘置による拘禁反応で精神障害状態に陥っていると認定したが、「日常的に必要な買い物はできる状態にある」として、後見人が必要ではないとした。袴田 巌さんの精神障害を裁判所が認めたのは初めて。
●7月10日、袴田 巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立が却下されたことを受け、弁護団は東京高裁に即時抗告した。
●12月19日、東京高裁(園部秀穂裁判長)は袴田巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人を選任するよう求めた申立を却下した。1審・東京家裁決定を破棄し、審理を差し戻した。
●2009年(平成21年)3月2日、東京家裁は袴田 巌さんの姉:秀子さんを保佐人とする決定を下した。保佐人は再審請求の権利を持つことから、第2次再審請求の障害となっていた法的問題が解消される見通しとなり、弁護団は「実体審理に入っていけるので喜ばしい」と評価している。弁護団は、袴田 巌さんが常時判断能力を欠くとして成年後見制度における「後見開始」を申し立てていたが、同家裁は判断能力の欠落にまでは至らず、著しく不十分な状態にあるとして「保佐開始」の決定に止めた形だ。2004年(平成16年)の申立開始後、高裁差し戻しを経て、5年目の決定となった。
●2011年(平成23年)1月27日、日弁連が弁護団の人権救済申立に基づき、袴田 巌さんに強い精神疾患がみられ心神喪失状態だとして刑の執行を停止し、適切な治療を受けさせるよう法務省に勧告した。日弁連は再審請求や後見開始の審判に伴う精神鑑定などから、深刻な妄想性障害と判断している。
●2012年4月25日、袴田 巌さんの姉:秀子さんは東京家裁に成年後見制度に基づく後見開始の申立を行った。2009年(平成21年)に袴田 巌さんの保佐人に選任された秀子さんは「認知症の病状が年々悪化している」と説明。弁護団は「後見開始で心神喪失状態と認められれば、死刑執行の停止につながる」としている。
●6月28日、2次再審請求中の袴田 巌さんに対して東京家裁が精神鑑定を実施することがわかった。成年後見制度に基づき、姉の秀子さんが申請している成年後見人就任の可否を判断する。秀子さんは既に袴田 巌さんの保佐人を務めているが、財産管理などでより権限の強い成年後見人になることを求めている。岡島弁護士は「後見人は、本人が心神喪失状態にないと就任できない。認められれば、刑事訴訟法に基づき、死刑執行が停止される可能性がある」と話した。
●2013年5月21日、東京家裁(小西洋家事審判官)は袴田 巌さんの姉:秀子さんによる成年後見の開始申立について却下した。小西審判官は「必要な鑑定ができず、後見開始の審判ができない」とした。弁護団が即時抗告。弁護団によると、同死刑囚は2011年時点で認知症の疑いがあったという。
●2013年7月10日、東京高裁は袴田 巌さんの姉:秀子さんが静岡地裁に第2次再審請求中の袴田 巌さんの後見人就任を求めた申立の即時抗告で「精神鑑定ができていない」との理由を示し申立を棄却した。秀子さんは決定を不服として最高裁へ特別抗告した。
●2013年9月30日、最高裁第1小法廷(横田尤孝裁判長)は袴田 巌さんの姉:秀子さんが袴田 巌さんの成年後見人への就任を求めた申立の特別抗告で棄却する決定を出した。袴田 巌さんの弁護団が明らかにした。裁判官5人が全員一致で「単なる法令違反の主張で特別抗告の事由に該当しない」と判断した。
*東京家裁は2009年3月2日付で姉の秀子さん(76)を成年後見制度の保佐人に選任する決定を出した。この制度が死刑囚に適用されるのは初めて。保佐人は、精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり、一定の財産処理などを行う権利があり、再審請求も可能である。2008年4月の第2次再審請求は、袴田死刑囚が心神喪失状態として、秀子さんが申立人になったが、検察側は「秀子さんに請求の資格はない」としてきた。秀子さんが保佐人になったことで、資格を理由に請求が門前払いされる可能性はなくなった。なお、秀子さんは2004年2月に後見人選任を申立たが、東京家裁は2008年6月に却下。即時抗告(裁判上、迅速に確定されることが必要な決定について、期間を定めて認められる不服申し立ての方法)に対し、東京高裁は2008年12月、家裁に審理を差し戻していた。
<刑事訴訟法>
第四百三十九条 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。
一 検察官
二 有罪の言渡を受けた者
三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人
四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹
第四百七十九条 死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。
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